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デザイナー紹介

有限会社シド+クリエイティブユニット 伊藤 茂実氏

ヴィジュアルなイメージを引き出し、具現化することが仕事

現在のようなペットブームになる以前から、動物病院などのデザインを手掛けてきた伊藤氏は、その業界の先駆けとして高い評価を受けている。何よりもお店の繁栄を願い、その時々のトレンドを示しながら、店舗オーナーのイメージを丁寧に突き詰めた提案に努力されている。「ワクワクしたサプライズ感」を散りばめた、日々の仕事や実績についてお話をうかがった。

有限会社シド+クリエイティブユニット 伊藤 茂実氏

伊藤 茂実Itoh Shigemi

1990 多摩芸術学園ビジュアルデザイン学科卒業
1990 渡欧(西欧諸国のデザインと文化を吸収)
   (株)松美舎(企画デザイン室)
1995 (株)DISPLAYS
1997 イトーシゲミ DESIGN OFFICE 設立
    SPECE CREATIVE UNIT立ち上げに参加
2002 有限会社SIDO+CREATIVE UNIT設立

店舗デザインご提案.com(以下「店舗」):最初に、これまでの実績、よく手がけている業態、得意としている点についてお伺いしたいと思います。

伊藤:今までは、飲食店、食品関係が多かったです。数年前からペット関係の病院やホテルなどやるようになり、人間の病院や歯科医院などもご依頼いただくようになりました。ちょうど今も、人工透析のクリニックをやっているところです。

店舗:ペット関係やクリニックが増えているということですが、どういったところから依頼が入るのですか。

伊藤:動物病院は、10年ぐらい前にたまたま一つ知り合いから依頼があって、建物から全部デザインさせてもらったんですね。当時はかっこいい動物病院というのが、すごく少なかったので、業界紙に取り上げられて、インタビューや、原稿の依頼などの取材を受けて、媒体に載ってから紹介が来るようになりました。

店舗:デザイン・設計の仕事は、独立前からされているんですか。

伊藤:そうです。18年ぐらいになりますね。最初は銀座松屋系のグループ会社に所属し、設計、デザインをやっていました。諸々のショッピングセンターや百貨店、専門店を手がけました。設計事務所などへの出向がすごく多くて、そのうち、その中の1社から呼んでいただいて入社し、西武系の仕事をするようになりました。設備がらみの仕事が多く、そのあたりを押さえられるようになったので、必然的に飲食店を手がける機会が増えたという感じです。

店舗:飲食店の中で、特に得意なものはありますか。

伊藤:特にえり好みはしていませんが、そのときどきのトレンドを取り入れた形、和風モダンの割烹とか創作料理店が多くあります。

店舗:デザインするときに特に大事にしているのはどんなことでしょうか。

伊藤:「色」ですね。色ということは照明です。ドラスティックに変貌を遂げることができるのは、色と照明なので、はずせないと思います。

店舗:ご提案はどのような形で行っていますか。

伊藤:ケースバイケースで、クライアントの求め方に応じた形で出すようにしています。イメージコラージュと簡単な平面図から小出しに始める場合もあれば、一度に見たいという方には、3週間ぐらい時間をいただいて、一気に提案することもあります。最近はCGが当たり前になっているので、あえて手書きのスケッチで渡したり、つい先日はA2サイズの紙を青焼きしたものに、少し色をつけて提出したりしました。年配の方で「最近は青焼きの提案はなくなったよね」ということが会話の中に出てきたので、なるべくそういった要望を取り入れたかったんですね。今の時期だからこそ、模型を使うとか、何かワクワクするサプライズ感を、できる範囲で用意するようにすることで、思いのほか喜んでいただけます。

店舗:仕事の進め方はどのようにしていますか。

伊藤:こちらもクライアントのご希望によって、打合せ回数を重ねた方が良い人と、そうじゃない人がいます。病院の先生などは、仕事柄細かいことを重視する方が多いので、気になる部分が出るととても心配されます。早めのレスポンスを心がけて、メールなどで頻繁に連絡するようにし、求めに応じることが大切だと思っています。

店舗:デザインはそのままにしたいけれど、予算がないという場合のコストコントロールはどのように行っていますか。

伊藤:時間をかけるか、お金をかけるかという話になったとき、今はお金をかけられないと言われる場合が多いです。それでも時間をかけられれば、素材にこだわって海外から材料を取り寄せるなどの努力はしますけれど、それもできないということになると、その店舗で注目される場所、例えば、壁一面とかカウンターのトップなどに、何かこだわりをもったデザインを取り入れて、際立たせることを考えます。千利休の、茶室の一輪の美しさを集約するために、庭の朝顔をすべて引き抜いたという「朝顔の逸話」のように、他をシンプルにするというやり方もあると思いますので、できる限りで考えていきます。

店舗:現場管理についてはいかがでしょうか。

伊藤:根が心配性ですので、なるべく行くようにしています。管理の方がしっかりしている現場なら安心できますので、逆にお任せしていた方がうまくいくケースもあります。 その場合でも、きちんと連絡を取り合って、状況の把握にはつとめています。

店舗:デザインフィーは、どのように設定していますか。

伊藤:昔は施工費の10~15パーセントが世間相場と言われていましたが、今は基本坪いくらで換算するようにしています。設備の絡む飲食店などの場合、事務所の場合、いろいろな状況がありますので、相談しながら決めています。

店舗:予算的には厳しくても、ご自身が手掛けたい作品として、あえて取り組むことはありますか。

伊藤:よくデザイナー仲間でも話すのですが、正直自分は作品を作るという意識はないですね。あくまでも店舗オーナさんの、ビジュアル的なイメージをうまく引き出し、希望を具現化することが、自分の仕事と思っています。例え今のトレンドとは違ったものであっても、オーナーが希望し、来店者に支持されるものであれば、デザインが古かろうが新しかろうが問題ないと思いますね。商売繁盛するお店を造ることが一番大切なことですから。ただトレンドの流れは皆さん気にしているので、自分で学習したことを「今はこうですよ」と説明して、道しるべのように、方向を示すように心がけています。いろいろな要望がある中から整理していただいて、実際でき上がったものが、イメージと誤差がないように努力しています。

店舗:これまでで印象に残っている仕事について教えてください。

伊藤:動物病院の女医さんからの依頼で、すごく印象に残っていることがあります。通常、夜8時ぐらいまで診察されていて、その後にオペ、10時以降に打合せでご自宅に伺うのですが、20羽ぐらいの鳥が家じゅうを飛んでいるんですね。とにかく鳥が大好きで、300万円だというシマフクロウとか珍しい鳥がたくさんいました。ご主人やご本人の肩にも、映画で見る海賊映画のオウムみたいにとまっていて、図面を広げると、バーッと飛んできて引っ張られたり、フンをされたり、すごかったですね。その打合せがすごくおもしろかったです。あとは、グアムのホテルにある飲食店をやったときに、装飾に硝子で作った竹を使ったんですね。北一硝子の職人さんに1000個近く吹いてもらって、みごとな竹林になり、それを見た外国人のホテルオーナーさんがとても気に入って、自分のところでも使いたいという話になったんです。お店を造りに行って、竹が売れてしまった。職人さんはもう二度と吹きたくない、と言っていたのに追加オーダーになってしまいました。こういうのは思い出になって楽しいですね。

店舗:もし、ご自身でお店を経営するとしたら、どんな雰囲気にしたいですか。

伊藤:造るとしたらやはり飲食店です。南国が大好きなので、のんびり過ごして、おいしいもの食べて、というリゾート地のイメージですね。料理をつくることも好きなので、おもてなしできるのはおもしろいと思います。

店舗:伊藤さんがお客さんとして行って、気に入っているお店はありますか。

伊藤:お店ではないですが、外国のホテルはカルチャーショックを受けます。異国文化では、デザインに対するこだわりが違いますし、見せ方も違いますので興味深いです。 日本では、新宿ゴールデン街がおもしろいですね。小説家の人など文化人が集まるんです。オープンしてから20年、30年たっていて、汚い(笑)けど、味があって落ち着きますね。

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