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デザイナー紹介

谷山武デザイン事務所 谷山 武氏

人との関わりが育てる、記憶に残るデザインを

設計施工を行った経験による、クライアントにも施工者にも丁寧でわかりやすい仕事で定評があり、さまざまなジャンルの依頼が集まる谷山氏。お客様と感覚を共有し、店舗に関わるすべての人々を介して、“記憶に残るデザイン”を生み出したい。そんなデザインに対する思いと、仕事への取組みについてお話をうかがった

谷山武デザイン事務所 谷山 武氏

谷山 武Taniyama Takeshi

谷山武デザイン事務所
東京都足立区

店舗デザインご提案.com(以下「店舗」):最初に、谷山さんのこれまでの実績や得意な業態について教えてください。

谷山:今は、さまざまな業態のデザインを手がけていますが、初めは設計施工の会社で、施工監理を行っていました。でも、もともと設計をやりたかったので、設計事務所に入りました。チェーン店など大きな飲食店の案件を扱っている会社で、そこでは動線や客席の取り方など、ベーシックなことを学びました。次の会社は、逆に20坪くらいの個人オーナーからの依頼が多くて、和洋食レストラン、スナック、バーなど、ありとあらゆるジャンルの飲食店を経験しました。独立後は、携帯電話ショップやアパレルなどの物販店や、変わったところでは紙袋、パッケージやラッピングトラックなど、店舗デザインだけでなく、多種多様なデザインをしています。よく、作成するパースが、「ほかと違った特徴がある」と言われて、人づてにお仕事をいただくことがあるんですが、イルミネーションを行っている会社の方から誘いを受けて、デコレーションしたパースを作り、イルミネーションコンペに参加したこともあります。

確かに谷山さんのパースはきれいでカット数も多いので、プレゼン提案がわかりやすいという声を聞きます。平面図も仕様が細かく書かれていて、施工側にも丁寧なのは、かつて施工監理をされていたからでしょうか。

谷山:設計事務所にいた経験ですね。壁でも床でも、図面上で見えるものは、仕上げまで指示をきちんと入れるようにしていたんです。「そこまでしなくてもわかるよ」と言われることもありますが、作業時間は自分の中で処理できれば良いわけですから、わかりやすく伝われば、受注につながることもありますしね。

得意としている業態はありますか。

谷山:これが得意だ、という考えは、今はあえて持たないようにしています。でも、やらせていただきたいのは、バーとか踊りのクラブとか、夜遊びする場所です。(笑)楽しみながら、いろいろな提案ができると思います。自分では意識していないのですが、今まで手がけた店舗を見てきた人から、「ガラスと金属が得意だ」とか「色っぽいお店をつくる」というイメージを持たれることがあります。好きなことなので、ナイトシーンを彩りたい気持ちが表れるのかもしれません。

デザインするときに、特に大事にしていることはなんですか。

谷山:どこか一箇所に、“遊び”を入れるようにしています。ご要望に応えるのは当然のことながら、そのままでは普通のお店になってしまうので、予算の範囲内で、パンチの効いた何かを入れるようにします。お店のシンボルとなるようなものですね。あとは、動線と、空気感、質感を大事にしています。

質感などをデザインに反映するときに、意識していることはありますか。

谷山:照明との兼ね合いです。本物の木や石が使える場合は、テクスチュアを生かした塗装や削り方があると思いますが、今は擬似材料を使うことが多いので、照明効果を使って空間を作ることを、パース段階からイメージしています。

疑似材料でも、陰影をつけることで雰囲気を出せるということですね。

谷山:照明ひとつで変わるので、大事にしています。家具、素材のランクダウンはあっても、照明のランクは落とさないようにしますね。

打ち合わせの頻度やプレゼン方法など、仕事の進め方はどのようにしていますか。

谷山:まずはお客様の趣味嗜好を知ることに時間をかけます。最初はビジュアル的なものは出さず、打ち合わせを何度も重ねて、頭の中の照準を合わせるようにします。時間があれば飲みに行ったりもして十分話し合い、お客様のイメージに近い店舗の写真を持ち寄って、更に詰めていきます。お客様を知ることで、プランやパース作りをスムーズに進めることができるんです。

1ヶ月でオープンしたい、というような至急の案件もあると思いますが、その場合はいかがでしょうか。

谷山:お客様のさまざまなご要望をミックスしなくてはいけないので、1、2回の打ち合わせでは難しいですね。お客様と会う回数は大事だと思います。初回打ち合わせ後、すぐに平面プランを起こす方は多いと思いますが、自分としては、しっかりとヒアリングした後に、パースまで作ってイメージプランでご提案します。お客様には、感覚的な部分で「良い」と思っていただかないと、オープンした後でぶれる気がするんです。お客様も施工側も、一丸でなければいけないと思います。

デザインフィーの設定はどのようにされていますか。

谷山:さまざまなご依頼をいただくので、「デザイン費」、「設計費」、「監理費」に細分化し、お客様に必要部分を選んでいただく形をとっています。物件の状況やデザインのボリュームなど考慮しながら、ご相談に応じて柔軟に対応しています。

これまでに手がけた中で、特に印象に残っている仕事はありますか。

谷山:ジャマイカ料理店のご依頼です。行ったことがないので、生活習慣などバックボーンをいろいろ聞いて、言葉の段階では決まったのですが、複雑で図面に書けなかったんです。(笑)だから、現場で大工さんの作業を見ながら「もう少し出して」とか「そこは下げて」とか、ひとつずつ決めながら進めました。ニュアンスだけでやったという体験で印象深いです。それから、アニメ「AKIRA」の世界観を再現したいという、バーのオーナーさんからの依頼では、その退廃的イメージを出すために、施工業者さんと土手に廃材を拾いに行きまして、それを天井にディスプレイしました。変わったコンセプトの仕事で楽しかったですね。

もしご自身だったら、どのようなお店を経営したいですか。

谷山:やはり “女性を口説けるゴージャスな夜のお店”です(笑)。ナイトシーンを引っ張っていくようなお店がいいですね。

では、谷山さんが訪れた店舗で、気に入った空間はありますか。

谷山:音楽が好きなので、最近だと青山にあるバーです。ロックが大音量でかかっている中で、知り合いやミュージシャンに出会ったり、お店の人とお話したりしていると、普段の生活から開放されて、リラックスできます。

音楽と空間デザインは何か関連性があるのでしょうか。

谷山:曲づくりとお店をつくるステップは、ある種一緒だと思います。料理もそうですね。どれもゼロからのスタートで、みんな(いろいろな素材)で作って、誰かの手に渡って、使われて(歌う、食べる)、評価される。空間の場合では、デザインにオーナーのスパイス、施工業者のアレンジが加わってでき上がり、それを使う人たちによって、記憶に残っていくものです。単体では成り立たない。ホームページにもコンセプトとして載せているのですが、あふれるデザインの中で、「記憶に残るものを生み出していきたい」と思うのです。先ほど話した「遊びを入れる」ということも、実はそこにつながっています。

空間も、音楽も、料理も、人を介して生きるものですね。

谷山:一人ひとり違う感情を持つ、それが面白いんです。だから、これが自分たちのデザインコンセプトだと押し出す必要はなく、それぞれが見て、感じて頂ければ良いと思っています。

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